#17 岩崎 真実先生

mami_iwasaki

富山大学研究者インタビュー#17

2024年9月24日12:00

 

 

 

 

 

 

医工をつなぐ

ものづくり

 

 

 

岩崎真実先生

富山大学 工学系機械工学コース・助教

 

 

岩崎真実先生は、生体医工学の研究をしています。

 

紹介

 工学部で活躍される岩崎先生は「人の命を助ける」という目的を軸に幅広い研究に携われています。現在のキャリアに就く前は医学の世界で経験を積まれました。医療機器の開発に携わる中で、チームに工学の知見があればもっと開発期間が短縮されたり、予算を削減できたり、スムーズに進むだろうと感じることが多々あったそうで、自ら「医工の橋渡し役になろう」と考え、修士で専攻した材料科学の知識を活かすことのできる工学部の研究者の道に進まれました。

 

医療機器への応用を目指した 金属表面改質 

 岩崎先生は、安田剛敏医師(元:富山大学 医学部 整形外科准教授、現:黒部市民病院 整形外科部長)、鈴木賀代医師(富山大学 医学部 整形外科 助教)らが考案された富山大学初の医療機器である上腕骨用カスタムメイド人工骨幹CRADの開発プロジェクトに 携わりました。CRADは骨腫瘍で切除した骨を再建するために埋め込むチタン合金製インプラントで、3Dプリンターを用いて、カスタムメイドで造形できる画期的なものです。設計から納品までが迅速に可能であり、肩関節を温存可能で患者さんの高いQOL向上が期待できます。

 この研究を通じてヒントを得、現在岩崎先生は金属表面改質をテーマに研究を行っています。インプラントは埋め込んだ後に生体組織と徐々に親和し、体の一部となりますが、患者さんの体の中で炎症が起こってしまったり、感染症が起こってしまったりというリスクも伴います。そうなると抗生剤を投与し続けたり、再手術が必要になるなど患者さんの負担が増してしまいます。そのリスクを回避するためにも生体組織と接触する金属表面の最適化は非常に重要です。強度、抗菌性、生体親和性を兼ね備えた表面形状の検討をしています。

 

図1. 上腕骨用カスタムメイド人工骨幹CRAD(富山大学医学部整形外科)
http://www.med.u-toyama.ac.jp/ortho/ortho/news/133.html

 

災害時に活かす新規材料開発

 「もう一つのテーマとして災害時に『人の命を助ける材料』という視点からも取り組んでいます。」

その材料として先生が注目しているのが牡蠣殻です。牡蠣殻には浄水作用や消臭・抗菌性が報告されていますが、処理費用の負担等が課題になっているため、有効な活用方法が求められています。その中の活用方法の一つが災害時に水を保存するためのタンクです。

「災害時に一番なくては困るものが水です。しかし、通常のタンクでは飲用水としては保存が効かず、用途が限られてしまいます。そこで、牡蠣の浄水作用をうまく利用することで水の保存期間を延ばすことを目的に研究を進めています。現在は瀬戸内海産牡蠣殻を使用していますが、牡蠣は能登半島地震の被災地の特産品でもありますので、牡蠣殻を有償で買い取り、そのお金を被災地復興に役立ててもらうということも想定しています。」

現在の研究では牡蠣殻を使用することでタンク材料の強度もアップするといった実験結果もでており、実用化に向け更なる研究を進めていかれるそうです。

図2. 瀬戸内海産牡蠣殻(岩崎先生ご提供)

 

おわりに

 岩崎先生は、これまでの経歴の中で多くの研究に携わり、多くの研究者の先生の背中を見てこられました。その先生方から感銘を受け、研究者の道に進むことを決めたそうです。
「研究に信念と責任感を持って取り組まれる姿がすごくキラキラしていて、言葉で語らなくても他の先生や部下などスタッフの心を動かすんですよね。とても素敵だなと感じました。」

 また、教員になって日頃から感じていることを、このように語っていただきました。
「現在は教員になり、教育という使命が加わりました。その中で研究活動においては上下関係を意識することなく、気楽に接して欲しいと学生さんには伝えています。自分の頭で考えて、自由に意見を出してもらって、まずは楽しく研究活動をしてほしいと思っています。時折、学生さんから『すごい』とか『面白い』とか『勉強になる』と素の反応が返ってくることがあるんです。そうやって学生さんが感動してくれる瞬間をもっと引き出せるといいなと思います。」

 先生はパワー溢れる研究者で、これまでの人生で培った熱意を持って教育にも取り組んでおられます。周りの人を元気にするお人柄は、次世代の研究者を増やすことにも繋がっていくのだろうと感じました。

 

(文責:学術研究・産学連携本部 コーディネーター 浮田)

 

【リンク先】

富山大学研究者プロファイルpure https://u-toyama.elsevierpure.com/ja/persons/mami-iwasaki

富山大学強度設計工学研究室ホームページ http://enghp.eng.u-toyama.ac.jp/labs/me02/

 

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