INTERVIEW

研究者インタビュー

富山大学 研究者インタビュー#49

2026年3月2日

 

研究成果と社会をつなぐ
山田 強 先生
富山大学 薬学・和漢系 准教授

山田先生は、社会実装を見据えた、効率良く・無駄なく・環境に優しい製薬・合成プロセスを追求し、研究成果と社会を繋ぐための研究に取り組んでいます。

 紹介

 基礎研究で有益な医薬品候補化合物(シーズ)が生まれても、製造プロセスが確立できずに、埋もれてしまう研究成果が多く存在すると言われています。こうした問題を解決するための研究に取り組まれているのが薬学・和漢系の山田先生です。人々を助けるために、これまで世の中になかった新しい薬を創りたいと考え、薬学の道に進みました。

「薬をゼロから生み出す基礎研究はもちろん重要ですが、成果をスケールアップして、必要とする人々に必要な量を届けてこそ意味があると考えています。私は、良い品質で、安定して、安く効率的に製造するプロセスの開発に取り組んでいます。例えば、医薬品や原薬に限らず、“この化合物を大量生産したい”という依頼に対して、効率的で採算の取れる合成プロセスを開発し、提示しています。こうした取り組みを通じて、社会実装の橋渡しとなるよう、研究を進めています。」

 

図1 山田先生の研究対象(筆者作成)

 

製造プロセスを見据えた反応器・触媒設計

 従来の有機合成研究では、まずはフラスコ内で化学反応を起こし、反応終了後に分離するというバッチ法の手順で進めることが主でした。一方で、現在の製薬・原薬メーカーでは、連続生産を可能とするフロー法(図2)を自社で確立しているケースも増えてきました。

バッチ法とフロー法では、最適な触媒の性質が異なります。今までの研究開発では、フラスコで使用していた触媒をフロー法に応用したらどうなるかという手順で進めることが主でしたが、私は最初からフロー法に特化した触媒を作るという視点で取り組んでいます。例えば、フラスコの中ではスターラーによる攪拌で摩耗していた触媒も、フロー法では高い変換率を叩き出すことができるのです。」

 その視点から生まれた成果特にフロー反応において長時間安定して使用でき、多様な物質を高収率で変換できることを示したのです。(参照:doi.org/10.1002/cssc.202401859、doi.org/10.1002/cssc.202501205)

図2 連続生産技術フロー法のイメージ、一定の流量で原料が反応管に流入し、同じ流量で生成物が排出される。(山田先生シーズ資料より)

 

電気を活かしたグリーンな合成技術

 次世代の技術として、電解合成反応を取り入れた開発も進めています。電気はインフラが整っているため、どの工場でも取り入れやすく、反応させたい場所にピンポイントで効率よくエネルギーを与えられるので品質・生産コスト・環境面でも今後の活用が期待されています。

「電解合成自体の歴史は古いのですが、最近になってようやく原薬・製薬業界での実用化も始まりました。新薬製造だけでなく、従来からあるプロセスをより効率的により環境に優しくアップデートする目的での応用も広く期待できる技術です。これまでの研究では、アセタールの脱保護における、従来の酸加水分解や中和工程を排除し、電解合成(無水、中性条件)に置き換えることに世界で初めて成功しました(図3)。これまで問題となっていた廃棄物が発生しないので、より環境に優しいプロセスを構築できます。現在は、この成果を連続フロー反応にも応用しようと挑戦しています。」

 

図3 電気を用いた新しい脱保護法(出典:https://doi.org/10.1039/D4GC06348A)。本成果はGreen Chemistry誌のCover Pictureにも採択されている。(山田先生ご提供)

 

プロセス設計・改善で企業課題に応える

 先生は、その研究の特性から、これまで多くの企業とも連携してきました。

”この物質を使って何か新しいことをしたい”“この目的物の最適な合成プロセスを確立したい”といった企業課題の解決に向けた研究にも取り組んできました。私の所属する研究室では、反応(器)設計、触媒設計、電気の活用、スケールアップなど、様々な視点を統合して最適な合成プロセスを検討することが可能です。これまで、医薬品だけでなく、原薬・API、化成品関係の企業様ともご一緒させていただきました。今後も広い業界のお役に立ちたいと考えています。」

 

おわりに

 山田先生は温和でオープンなお人柄が非常に印象的でした。富山大学には2024年に着任されましたが、学内の多くの研究者と普段から活発に議論を行われています。

「大学で生まれた新しいイノベーションを、いち早く社会・企業に橋渡しできるような提案を他学部とも協力して行っていきたいと思っています。私が研究していて一番嬉しいのは、開発した技術が実際に使われ、社会に役立つ瞬間です。今後も多くの研究室や企業さんと連携して、どんどん実用化できるプロセスを社会に出していきたいと考えています。特に、富山県には原薬・製薬メーカーさんも多くありますので、今後繋がりを広げていけることを楽しみにしています。」

 山田先生への、学術指導・共同研究等のご相談はOneStop窓口からお願いします。

(文責:学術研究・産学連携本部 コーディネーター 浮田)

 

リンク先

富山大学研究者プロファイルpure https://u-toyama.elsevierpure.com/ja/persons/tsuyoshi-yamada/

Researchmap https://researchmap.jp/yamadatsuyoshi

富山大学研究シーズ「社会実装を志向した、反応、触媒、技術の開発」 https://sanren.ctg.u-toyama.ac.jp/seeds_search/search/detail/396